経営上の基礎知識
・質問1.代表印ってなんですか?実印とどう違うの?四角の印鑑は何?
・質問2.登記の意味がよくわかりません。何のためにするのですか?
・質問3.謄本と抄本の違いがわかりません。
・質問4.印紙が貼っていない契約書は無効ですか?
・質問5.開業後にやらなければならない事務にはどういうものがありますか?
・質問6.「取引先が倒産した」という話があった場合、まず何をしたらよいですか?
・質問7.債権回収はどういう具合にすすめたら良いですか?
(監修 高橋中小企業診断士オフィス)
質問1『印鑑の基礎知識』
代表印ってなんですか?実印とどう違うの?四角の印鑑は何?
1.代表印・実印とは?
個人 | 会社(法人) | |
---|---|---|
呼び名 | 実印 | 代表印 |
提出先(登録先) | 市区町村役場 | 法務局 |
印影 | 制限なし | 制限なし |
抹消 | 不要ならば抹消可能 | 常に登録されている |
その他 | 15歳程度から登録可能 | ・四角でも、丸でもかまわない。 ・会社に一つとは限らない。 ・正確には会社の取締役の○○さんの代表印というべき |
★印鑑の大きさは印鑑条例などにより定められています。(代表印が丸印でなければならないという決まりはない)
★公的なところに登録されているか否かが問題。立派な印鑑でも代表印ではないこともあります。「代表取締役の印と書いてあっても、代表印とは限らない事もあります。
2.どういうときに使うか?
個人あるいは法人の意思をまちがいないものとしたいとき(例:役所への届出、契約書)
★登記申請などのときは代表印を押すことを義務づけられています。
★代表印・実印であることを確認するために印鑑証明書があります。
★電子証明書も実印と同じです。
★銀行印とは別にした方がよいです。
(すり減ってしまうと、印鑑証明書の陰影と異なってしまう)
3.四角の印
通常「社印」と呼ばれているもの。必ずしも必要ではありません。
・請求書や見積書に使うことが多い。
・法的な根 拠のある印鑑ではない。
・日本の商習慣の一つ。
代表印を押しても、もちろん問題ありませんが、代表印をあまり 頻繁に使用するのは好ましくないという考え方が背景にあります。
4.外国人はどうするのか?
外国人は印鑑を持っていない→「サイン証明」という手続きをとります。
★公証人→法務局→外務省→相手国在日公館の証明
質問2『登記について』
登記の意味がよくわかりません。何のためにするのですか?
1.登記の仕組み
★登記は何のためにするのか?
第三者に対する対抗要件を備えるため
(=事情を知らない第三者に主張するため)。
登記は任意の制度であっ て、登記する、しないは基本的に自由(例外あり)。対抗要件なんていらない、と思えば登記しなくてもよいです。
民法第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従い その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
2.不動産登記と商業登記
不動産登記 | 商業登記 | |
---|---|---|
登記を扱う役所 | 法務局(法務省) | 法務局(法務省) |
メインとなる実体法 | 民法 | 会社法 |
手続法 | 不動産登記法 | 商業登記法 |
登記そのものが効力発生要 件になる場合(例) | 抵当権の順位変更 | 会社設立、会社分割 |
★不動産登記と商業登記の管轄は必ずしも一致しないので注意
(不動産登記しか扱っていないところがあります)
3.印紙もいろいろ
収入印紙 | 登記印紙 | |
---|---|---|
内容 | 税金 | 手数料 |
経理 | 租税公課 | 雑費 |
どういうときに必要か? | 登記申請をする場合 | 登記事項証明書、印鑑証明書などを取る場合 |
その他 | あくまで税金。登記申請する場合は消印しないこと! | 県の証紙、市の証紙と同じ。 |
質問5『開業後の運営実務』
開業したら、いろいろ役所などに届出が必要と思いますが、どこに何を提出すべきですか?
1.これだけは最低やっておきましょう(経理の基礎の基礎)
★基本的な考え方
まじめに経理をやっている方が、結局お得。脱税しようと思っても、一般の人が考えつくようなものは既に税務署は お見通し。合法的にまじめに節税するべきです。
「白色申告の方が良い」などといいう人の意見に耳を貸さないこと。脱税をした場合、大事な取引先に税務署が行くことになり、「おまえのところのせいでウチに税務署がきた」などと言わ れることになる。
新たな脱税方法を考える時間があれば本業に精を出すべきです。
1)現金管理 個人の財布とは別の財布を用意して、家計と区別する。
領収書は月ごとにまとめて、スクラップブックなどに貼っておく。 レシートでも問題ないので、敢えて別に領収書を書いてもらう必要はあまりない (逆に中身がわからなくなり、後で困ることも)。 現金出納 帳の作成方法がわからないときは、お小遣い帳、もしくは家計簿でもよい。 とにかく記録することです。
2)通帳 家計とは別に通帳を作ること(個人でも)。
個人の場合、屋号入りの口座を作ることができる。
・受け取った請求書、納品書(とにかくなくさないこと)まとめる方法はいくつかある。
1.月別に.1冊にまとめる(とじひもなどで綴じる)
2.科目ごとにファイルする。
3)相手先ごとにファイルします。
その他の書類の整理 事業をやっていると様々なところから書類が来る。次のような分類ごとにファイルしておく。
1.銀行からの書類 当座の明細(バックシート)、借入関係の書類、その他利息の計算書など、経理上必要になることが多いので絶対に捨てずに ファイルする。
2.社会保険関係の書類 資格取得確認通知、その他の書類はすべてファイルしておく。
雇用保険の被保険者証を預かる場合はなくなさいように注意。
個人の健康保険や国民年金の領収書も必ず保管(確定申告で必要)。
3.税金関係 納付書はもちろん、申告書や還付通知のはがき、その他届け出した書類はすべてまとめてファイルしておく。
4.その他 リース契約やその他お金がからんでいるような書類は保管しておくこと。
2.売掛金の回収方法
まず最初に基本となる回収サイトを決定します。末締めの翌月末払い、20日締めの翌.10日払いなど。締め日から支払までの日 数をなるべく短く設定すること。基本を決めて、後は柔軟に対応するが、あまりに長い場合などは仕事の受注そのものを考え直すべきです。特に支払がルーズなところとはつきあいそのものを再考します。
[注意点]
1)現金が一番安全確実。
2)小切手はすぐに銀行に持ち込むこと。
その日の内には現金化できないので注意。持ち込むときは裏に名前を書く。
法的な有効期間があるのですぐに持ち込むこと (まとめて持ち込むような癖をつけると紛失する危険も高くなるとともに、取引先がいつまで経っても引き落とされないことに不安を抱くとになる)
3)なるべく手形は受け取らないようにする。
手形はただの紙切れにすぎないことを忘れないこと。
手形をもらう=回収した、ということにはならない。
業界として手形が必須ということでなければ、「手形は絶対に受け取らない」と最初から決めておくのもよい。
3.支払の方法
締め日を決めて、その日までに来た請求書を、あらかじめ決めた日にまとめて支払うようにします(請求書がきた都度支払う必要 はない)。 口座引き落としが可能なものについては、なるべく利用する。1件づつATMで支払う方法もあるが、銀行にまとめて依頼することもできます。 インターネットを利用すれば時間と経費が節約できます。 振込手数料は差し引いて払うことが多いですが、民法上は引いてはいけないものと思われます。 勝手に差し引くことに強い不快感を 示す人も少なくないので、「こっちが客だから引いて当然」という考えは持たない方がいいです。 経営者の中には絶対に引かないと いう方針の人も。 意外にチェックされていると言ってよいです。 勝手に引く相手には、単価等で上乗せしているケースもあると思われます。
4.給与の支払
現金が基本。振込にする場合は了解を取ること。20日締めの25日払いなど、支払パターンを決定します。
社員個人の引き 落とし日などを聞いてから決定してもよいです。
一番お金のない時期(支払直後など)に支払日を決めると資金繰りに支障を来 すこともあるので、よく考えることです。
振込が多いが、現金を渡されると誰でもうれしい(!)ので、あえて現金支給している経営者も少なくありません。
※翌月.10日までに源泉税を支払うことを忘れないこと
(納期の特例の場合は.1月.10日と7月.10日にまとめて支払う。事前 の届け出が必要)。
※給与計算は手でもできるが、ソフトを使うと便利。
フリー(無料)のものもあり、少人数の場合はこれで十分。
5.人を雇用する場合の注意点
雇用契約書を渡すことが必須。時間や休みその他について、最初にきちんと話をしておくことです。
近年労務トラブルは飛躍的に 増えています。基準法の基本程度は書籍等で知識を得ておくことが重要です。
※給与の決定方法を明確に規程していない場合は、基本給.1本でスタートすべき。
○○手当などを作ると後で面倒なことになる。
給与格差を最初からつけるのもよく考えてからにすべき。
全員一律同一給与でスタートするのも一案。
※パートだからと簡単に考えないこと。法的な規制は常勤の者と何ら変わらない。
※求人票に実際よりも高い給与を載せないこと。後でトラブルになる。
※助成金の可能性について常に意識すること。但し、本末転倒にならないこと。
※会社が発展するか否かは「人」にかかっている。経営の最も重要な課題であることを認識するべし。
6.契約書の作成
口約束はトラブルのもとであることを認識することです。
知っている相手だから、以前取引したことがあるから、などの理由で書類を交わさないのは危険です。
見積なしで受注するのも同様(後で減額されても文句が言えなくなる)。
1.倒産の種類
手段 | 内容 |
---|---|
信用調査 | 数万円でできる |
取引そのものをしない | 危なそうな相手とは取引しないのが一番。何か引っかかるときは取引しない。 |
契約書の締結 | 重要。取引条件をここで確実にする。なるべく現金取引にする。 |
観察 | 会社の雰囲気を観察すること |
担保を取得 | 手形は一種の担保。裏書してある手形を優先的にもらうことも可。定期預金を 担保にする例は多い。売掛債権の担保が最近脚光を浴びている。 |
内容証明郵便の送付 | 債権額その他を確定。 |
いざというときの計画 | いざというときにどうするかを考えておく。あきらめる、というのもあり。 |
2.確認すること
項目 | 内容 |
---|---|
社長と連絡は取れるのか? | 逃げている場合、対応が難しい。 |
事業継続の可能性はあるか? | 可能性がないのなら、けんかしてもよい(徹底的に回収に努める) |
どのような法的手続を取っているのか? | 申請している段階なのか、正式に受理されたのか、どの段階にあるのかを確認する。 |
自社の債権額 | 正確に把握すること。相殺可能性も検討。 |
質問7『債権回収』
債権回収はどういう具合にすすめたら良いですか?
1.日頃の準備
日頃の準備で債権回収の結果は決まります。
手段 | 内容 |
---|---|
信用調査 | 数万円でできる |
取引そのものをしない | 危なそうな相手とは取引しないのが一番。何か引っかかるときは取引しない。 |
契約書の締結 重要。 | 取引条件をここで確実にする。なるべく現金取引にする。 |
観察 | 会社の雰囲気を観察すること |
担保を取得 | 手形は一種の担保。裏書してある手形を優先的にもらうことも可。定期預金を 担保にする例は多い。売掛債権の担保が最近脚光を浴びている。 |
内容証明郵便の送付 | 債権額その他を確定。 |
いざというときの計画 | いざというときにどうするかを考えておく。あきらめる、というのもあり。 |
2.いざというときの手順
債権額の確定・把握(契約書の確認 ②債務承認書などを作成(時効停止)
回収の可能性を検討
あり)回収方法を決定 なし)あきらめる
★現実問題として、債権回収は極めて厳しいのが現実。
3.払えるのに払わない相手に対する対応
★しつこさが重要。こういう人はうるさいやつから順番に払う傾向がある。
手段 | 内容 |
---|---|
相手の確認 | 登記簿などで確認 |
文書の送付 | 必ずしも内容証明郵便でなくてもよい |
反応ありの場合 | 分割払いに持ち込む(準消費貸借) |
○反応ない場合 | 強行手段に出る(以下) |
手形を切らせる。小切手を切らせる。 | 何もないよりはまし。 |
内容証明郵便の送付 | 債権額その他を確定。 |
法的手段に訴える | 少額訴訟(60万以下)、調停、支払督促などによるのがノーマル。いきなり訴訟することは希(お金がかかるため)。 |
4.危ないかなと思ったとき
種類 | 内容 |
---|---|
取引条件の変更 | 現金に変更 |
契約の解除、取引終了 | 契約の解除、取引終了契約書がないと難しいことも。 |
解除後(あるいは解除と同時に)、商品引き上げ。他社のものも可能。 | 窃盗にならないように注意。ここでも契約書がないと難しい。 |
代物弁済 | 物で払ってもらう。 |
手形を切らせる。 | 小切手を切らせる。 何もないよりはまし。 |
債権を取得して相殺 | できる場合は希。 |
債権額の確定 | 債務が存在することを確認させる。これだけでも時効がストップする。 |